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コラム 2023.01.31

にいがた酒旅のススメ〈阿賀野川ライン:五泉市・阿賀野市・阿賀町編〉

新潟県内各地の酒旅コースを紹介し、リアルな酒旅や新潟清酒購入の参考にしていただくシリーズ。

今回は福島県境から阿賀野川沿いに位置する阿賀町、五泉市、阿賀野市の酒蔵を取り上げる。

最初に紹介したいのが、間近に迫った地酒イベント「ごっつぉまつり阿賀路 in ラポルテ五泉」。

2023年25日(日)に五泉市の交流拠点複合施設ラポルテ五泉で開催される。

阿賀野川・会津街道でつながる阿賀町、阿賀野市、五泉市と西会津の“ごっつぉ”を楽しめるイベント。

地酒試飲はチケット制(前売りもあり)で、阿賀町・阿賀野市・五泉市の5蔵の清酒と阿賀町のどぶろくの試飲が楽しめる。先着500名にロゴ入りおちょこもプレゼント!

会場のラポルテ五泉は、202110月にオープンした五泉市の注目スポット。多目的ホールやカフェテリア、産直ショップなどを備えている。

五泉特産のニットやシルク製品、農家直送の旬の野菜や加工品などが勢ぞろい。五泉市の2つの酒蔵の地酒も販売している。

カフェテリアの一番人気のメニュー「焼きカレードリア」。

五泉のブランド里芋「帛乙女(きぬおとめ)」はそろそろ終わるが、五泉産の里芋はまだ販売されているので、地元の特産を土産にするのもおすすめだ。

水の里・五泉の酒蔵

三方を山で囲まれ、水がきれいなことで知られる五泉市内には近藤酒造金鵄盃酒造の2つの酒蔵がある。

JR五泉駅から徒歩約6分の場所にある、1865(慶応元)年創業の近藤酒造の代表銘柄は「菅名岳」と「越乃鹿六(こしのかろく)」。

ともに五泉市の名峰菅名岳の伏流水で仕込んでいる。

「越乃鹿六」は旨味とともに程よい酸味があり、魚介類との相性が抜群といわれている。マンガ『美味しんぼ』でもエスカルゴに合う日本酒として登場している。試してみたい。

近藤酒造は平日のみ、事前予約制で酒蔵見学も可能。

 

五泉市のもう一つの酒蔵、金鵄盃酒造は旧村松町にある。創業は1824(文政7)年。

代表銘柄は「越後杜氏」。

JRの駅からは遠いが、新潟駅から高速バス五泉村松線を利用し、終点の村松駅で下車。そこから酒蔵までは徒歩約12分。酒蔵見学は受け付けていないが、販売はしている。

「しぼりたて」など、酒造最盛期のこの時季ならではの商品もチェックしたい。

 

金鵄盃酒造では昨季から2年がかりで分離した「村松さくら酵母」を使った純米酒を、今季仕込む予定だ。

桜の名所・村松公園の桜の花弁から採取した酵母を使った、村松ならではの新たな地酒は、2月から仕込み、四合瓶で500700本造る予定だという。どんな香り、味わいの1本になるのか。楽しみだ。

 

2月25日には2つの酒蔵の地酒を楽しめる初のイベント「越後杜氏・菅名岳の初しぼりを楽しむ夕べ」が開催される。場所はガーデンホテルマリエール。新酒の飲み比べを楽しんでみたい。

春の訪れとともに大地を彩る水芭蕉やチューリップ、桜。それらの名所を巡りながら、酒蔵を訪ねてみよう。

狐火伝説が残る津川の酒蔵

福島県境の阿賀町旧津川町には、麒麟山酒造下越酒造の2つの酒蔵がある。

津川の地への酒旅は、運行本数は少ないが、磐越西線を利用するのがおすすめだ。阿賀野川沿いの車窓の風景が旅情を誘う。

麒麟山酒造の造り蔵と下越酒造はほぼ隣接しており、津川駅からは徒歩約30分。

真っ赤な麒麟橋を渡って向かう。麒麟橋の真ん中から福島県側を望むと、麒麟の形を想像させる麒麟山が目の前にあり、常浪(とこなみ)川と阿賀野川の流れが山の前で合流する。何度見ても美しい風景だ。

 

麒麟山酒造の創業は1843(天保14)年、代表銘柄は「麒麟山」。今年、180周年を迎える。

「デンカラ」の名で親しまれる「麒麟山 伝統辛口」を代表とする淡麗辛口の酒は、地元を中心に、晩酌酒として多くのファンをもつ。

定番酒のほかに、この季節ならではの限定酒としておすすめなのが搾りたての生原酒「麒麟山 ぽたりぽたり」。酒米・五百万石を使ったものが11月に、そして越淡麗を使ったものが年明けの1月に発売された。

 

麒麟山酒造ではかねてから目標としていた、原料米を100%地元の阿賀町産にすることを2018年に実現。

生産者とつくる奥阿賀酒米研究会と、自社内のアグリ事業部で米作りを担う。

180周年記念事業の第一弾として「米づくり大学」を立ち上げ、現在一期生を募集している。興味のある人はチェックしてみよう。

酒蔵見学は5月から9月中旬の平日のみ行っている。詳細は公式サイトから確認を。

 

もう一つの酒蔵、下越酒造の創業は1880(明治13)年、代表銘柄は淡麗辛口の「麒麟」「ほまれ麒麟」など。

新たな銘柄「蒲原」は旨味とコクが特徴で、新潟市内の居酒屋でも人気を集めている。

下越酒造では高い技術を礎に、熟成酒にも力を入れている。2000年から熟成している「時醸酒」は年ごとに商品化されている。美しい琥珀色とブランデーのような深みのある味わいが魅力だ。長期熟成酒研究会に属し、合同イベントなどにも参加している。

 

下越酒造では通年、予約制で酒蔵見学や試飲が可能(土・日・祝日は要相談)。酒造りを案内してもらい、さまざまな酒を飲み比べてみたい。

4月2日まで開催されている「あが雛めぐり」にも参加しているので、酒蔵見学とともにひな人形の鑑賞も楽しめる。

あが雛めぐりのメイン会場となっているのが、2つの蔵から徒歩数分のまちなかにある狐の嫁入り屋敷だ。ここでは狐の面づくりなどの体験もできる。

 

施設内の「お茶の間久太郎」では、お隣阿賀野市の荒木豆腐屋の油揚げを使ったボリュームたっぷりのきつねうどんも味わえる。

下越酒造の「ほまれ麒麟」ワンカップと、麒麟山酒造の「麒麟山 伝統辛口」の小瓶(180ml)も販売しているので、うどんをつまみに地酒を楽しんでみては。

 津川の町には糀屋や漬け物屋、会津藩であった歴史を感じる馬肉を販売する肉店など、小さな町に多彩な店が集まっているのも魅力だ。 

 

2つの酒蔵の前には「パンとおやつ 奥阿賀コンビリー」がある。

地元の食材を生かしたパンや焼き菓子のほか、カフェでは季節のフルーツを使ったグラスデザートなどのスイーツも提供している。休憩スポットとして利用したい。

白鳥の飛来地にある3つの酒蔵

県内有数の白鳥の飛来地として知られる瓢湖がある阿賀野市には3つの酒蔵がある。

瓢湖から車で7分ほどのところにある越後桜酒造の創業は1890(明治23)年、代表銘柄は「越後桜」。

コロナ禍を機にリアルな見学はできなくなったが、VRゴーグルを使った酒蔵体験ツアーを実施している。

ゴーグル越しにこんなシーンを楽しめる。公式サイトから予約して出かけよう。

 

売店では、蔵出しの生しぼりの試飲も可能。定番から季節限定酒、甘酒、グッズなどさまざまな商品を購入できる。

2月発売予定、春限定の大吟醸酒。

 

瓢湖から徒歩約25分、JR水原駅からは徒歩約7分の場所にある白龍酒造の創業は1839(天保10)年、代表銘柄は「白龍」。酒蔵見学はできないが、商品の購入は可能だ。

この季節、楽しみにしている人も多い「大吟醸 あらばしり」は2月上旬から発売が始まる。

同じ阿賀野市にあるヤスダヨーグルトとのコラボから生まれた「ヨーグルトリキュール モウモウ」は女性に人気。

酒蔵から車で15分ほどの場所にあるヤスダヨーグルトのY&Yガーデンにも足を延ばしてみたい。

 

阿賀野市にあるもう一つの酒蔵越つかの酒造は、2つの酒蔵とは少し離れた、阿賀野川寄りに位置する。

創業は1781(天明元)年、代表銘柄は「河内屋義照(かわちやよしてる)」。

家付き酵母の「塚野酵母」を使った地酒を醸している。酒蔵見学はできないが、販売は可能。オンラインショップではオリジナルラベルの地酒を注文することもできる。

 

阿賀野市で注目のスポットは昨年8月に国道49号沿いにオープンした「道の駅あがの」。

五頭山を模した三角屋根がシンボル。

阿賀野市3蔵と麒麟山酒造の地酒を販売している。

季節ごとの旬の農産物や加工品、オリジナルの土産など、充実度抜群。

レストランやカフェのメニューも「ここだけでしか味わえないもの」も多数。

あがの食堂にぎりまんまの「にぎりまんま定食」。

あがの酪農カフェの生乳ソフトクリームも人気だ。

子どもたちが楽しめるスペースも屋内外にあるので、家族ででかけるのもいい。

酒蔵とヤスダヨーグルト、道の駅あがので買い出し&グルメツアーを楽しみ、
さらに時間があれば五頭温泉まで足を延ばして足湯や日帰り湯でリラックス。
阿賀野市の酒旅てっぱんコースだ。

写真協力/ラポルテ五泉、狐の嫁入り屋敷、近藤酒造、金鵄盃酒造、麒麟山酒造、下越酒造、白龍酒造、越後桜酒造、越塚野酒造

 

cushu手帖』『新潟発R』編集長

高橋真理子

cushu.jp

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