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コラム 2022.07.29

にいがた酒旅のススメ〈柏崎市編〉

 

県内各地の酒旅を楽しみ、リアルな酒旅プランの参考にしていただくシリーズ。

今回は726日に3年ぶりの「ぎおん柏崎まつり 海の大花火大会」が盛大に開催された柏崎市を特集。

柏崎市には「越の誉」の原酒造、「越乃男山」「あべ」の阿部酒造、「姫の井」の石塚酒造がある。

電車で訪ねたいのが、柏崎駅から徒歩10分弱の場所にある原酒造

 

創業は1814(文化11)年。北国街道の宿場町として栄えた地で、脈々と酒を醸し続けている。

2007年の中越沖地震で甚大な被害を受けたが、社員一丸となって復興。その翌年、新しい造り蔵「和醸蔵」が完成し、さらに共同開発した酒米が「越神楽(こしかぐら)」と命名された。

「越神楽」は「越の誉 大吟醸原酒 越神楽」などに使用されている。

原酒造では現在、全量県産米を使用。精米も自社で行っている。

個人での酒蔵見学は受け付けていないが、併設する直売所「酒彩館」では自社の全商品を販売しているので、ゆっくり買い物を楽しめる。

夏季限定商品で注目なのが、柏崎の花火をモチーフにした「越の誉 純米 夏の花火」。6種類の花火ラベルがあり、お盆の手土産にも最適だ。

上品な甘みとすっきりとした味わいで、デザートとの相性も抜群な瓶内二次発酵のスパークリング純米酒「あわっしゅ」は、先日表彰式が行われた「ワイングラスでおいしい日本酒アワード2022」で最高金賞を受賞した。

 

 

10月1日の日本酒の日には、県内でもいち早く新米を使った酒を発売する。

柏崎市と刈羽村産「葉月みのり」を精米歩合90%で使用した無濾過生原酒「越の誉 純米葉月みのり 新米新酒」だ。米の旨みを堪能したい。

 

柏崎駅前には、「越の誉」をはじめとした県内各地の銘酒と、柏崎の海の幸を味わえる「食事処おおはし(TEL.0257-22-5864)」がある。

定食でも鯛の姿造りや、尾頭付きのほうぼうの煮つけなどが味わえるのも、この店の魅力。長年、地元の人にも、観光客にも愛される駅前名店だ。

 

柏崎に来たら、柏崎駅隣の東柏崎駅から徒歩約5分の場所にあるドナルド・キーン・センター柏崎もチェックしたい。

日本文学や日本文化に数々の業績を遺し、柏崎市との縁も深かった日本文学者ドナルド・キーンを紹介する施設で、館内には図書閲覧コーナーや映像コーナーとともに、キーン氏の書斎と居間を再現した復元展示室もある。

定期的にイベントも開催されているので、公式サイトで確認してから出かけよう。

 

東柏崎駅から再び柏崎駅へ、そして信越本線に乗って富山方面へ。車窓から夏の海を眺めながら、のんびり電車旅を楽しみたい。

日本海を目の前に望む青海川駅は、お酒をコンセプトとした列車「越乃Shu*Kura」の停車駅でもある。夕日をバックに撮影を楽しむ人も多い。

青海川駅で降り、旧北国街道の急な坂道を登った丘の上に、酒の新茶屋がある。

2階のギャラリーからは青海川駅を眼下に、青海川と鯨波海水浴場、遠方には恋人岬の愛称で親しまれる鴎が鼻(かもめがはな)を望む絶景が楽しめる。

酒の新茶屋では原酒造の地元限定酒「銀の翼 特別本醸造」のほか、佐渡をはじめ県内各地の選りすぐりの地酒を販売している。

春は店の前のソメイヨシノがみごとに花開き、夏は青海川海水浴場での海遊び、そして秋には米山大橋の下を流れる谷根川(たんねがわ)にサケが遡上し、柏崎さけのふるさと公園で鮭の生態を知ることもできる。四季折々の観光とセットで訪ねてみよう。

 

阿部酒造と石塚酒造は、車で巡るのがおすすめだ。

創業1804(文化元)年の阿部酒造は、8年前に蔵に入った6代目、製造責任者の阿部裕太さんを中心に、平均年齢29歳の蔵人たちがチャレンジを続けている。

 

これまで、「あべ」「★(スター)」、田んぼ別で日本酒を仕込む「圃場別(ほじょうべつ)シリーズ」などを手掛けてきたが、今年、さらに大きな一歩を踏み出す。

それがノンアルコールジャンルへの参入、クラフトコーラシロップ造りだ。

 

5月まで応援購入システムのmakuakeのプロジェクトを実施し、目標を大幅に上回る応援を得て製造を開始。

麹甘酒の自然な甘みと、柏崎の霊峰・米山でしか栽培されないスパイス「米山トウキ」の刺激が調和した甘酒クラフトコ―ラ「kuracola」。

おすすめの飲み方はkuracola1に対してギンギンに冷やした強炭酸3を混ぜ、仕上げに柑橘類を添える。

2022年86日には、コーラ棟兼新販売所もオープンし、老若男女が楽しめる場へと、酒蔵を大きく変えようと動いている。

 

8月から9月には、蔵人たちが責任者として自由にものづくりを行う「僕たちの酒」も発売予定。「造っていて楽しい」という理由で酒母の仕込みに昔ながらの生酛系を採用したシリーズ。今季の味わいが楽しみだ。

 

阿部酒造から車で約5分の場所には、柏崎夢の森公園がある。

2006年に里山を復元し、環境学校の場となる公園を目指してオープン。子どもから大人まで参加できるさまざまな体験プログラムも実施いている。

 

エコハウス内にある里山café I’m homeでは、地元生産者から仕入れた食材を使ったパスタやデザートなどを提供。

夏季は柏崎産越後姫を使用したかき氷も登場。

良寛ソフトクリームも通年販売している 園内散策とともに立ち寄ってみたい。

公園から車で6分ほどの国道8号バイパス近くにある、元サッシ工場をリノベーションした複合施設ハコニワ内にある姉妹店kitchen105では、阿部酒造の地酒も味わえる。機会があったらこちらもチェックを。

 

阿部酒造から高柳方面へ約20分車を走らせると、酒蔵見学も行っている石塚酒造に到着。

見学はその日の作業内容によりできない場合もあるので、事前に連絡を入れておこう。

1912(大正元)年創業の石塚酒造では、もち米四段仕込みによる「凛麗芳醇(りんれいほうじゅん)」な味わいの酒をモット―とし、さまざまな商品を販売している。

夏のおすすめ「越後高柳さわがに 火入(ひいれ)」は、今年は 瓶火入れにより、搾りたての風味に近い香りや旨みを感じる純米酒に仕上げた。

もち米四段仕込みならではのやさしい旨みと、後味のキレのよさで、食事に寄り添う1本だ。米は高柳産米のみを使用した「越後高柳」ブランド。

酒の名前の由来は、裏を流れる小川にたくさんのサワガニがいるから。以前訪ねたときにも、サワガニを発見!

清らかな雪解け水で育つ米と、その水を使った酒が、高柳の自然の豊かさを伝える。

 

石塚酒造からさらに十日町市松代方面へ車で約5分の場にもなっているにもなっている高柳じょんのび村がある。

温泉やレストランとともに、手作りの豆腐やがんもどき、地元のどぶろくを販売する売店も人気だ。

 

さらに車を走らせ、荻ノ島や門出のかやぶき集落を見学し、古志の生紙工房 門出和紙で和紙作り体験をするのもおすすめ。

3つの酒蔵のストーリーを体感する柏崎の酒旅へ、出かけてみよう。

 

写真協力/阿部酒造 石塚酒造 原酒造 柏崎市商業観光課 里山café I’m Home

                   

cushu手帖』『新潟発R』編集長

本間文庫にいがた食の図書館」運営

         株式会社ニール

高橋真理子