富山県に隣接する県西端の糸魚川市には5つの酒蔵がある。
糸魚川市街の海側にあるのが「加賀の井」の加賀の井酒造と、「謙信」の池田屋酒造。糸魚川市街から約15分、小滝ヒスイ峡方面へ向かった根知谷にあるのが「根知男山」の渡辺酒造店。糸魚川市街から東の海岸側には「雪鶴」の田原酒造、焼山から源を発する早川沿いにあるのが「月不見の池(つきみずのいけ)」の猪又酒造だ。
酒旅には電車がおすすめだが、酒蔵見学や酒肴の買い出しが目的ならば車が便利。ドライバーをともなって自分だけ試飲、なんていう技?もある。
JR西日本の北陸新幹線と大糸線、えちごトキめき鉄道の日本海ひすいラインが乗り入れている糸魚川駅で下車し、加賀の井酒造と池田屋酒造のある海側へ。
2016年12月の大火を乗り越え復活した加賀の井酒造では、新しい酒蔵での作業をガラス越しに見学することができる。スタッフによる案内や試飲を希望する場合は2日前までに予約を。
加賀の井酒造の目の前には、20年にオープンした駅北広場キターレがあり、週末市やさまざまなイベントを開催。
展示ホールでは糸魚川大火の写真や、使用された消火器具などが展示され、大火の記録を伝承する空間になっている。
糸魚川名物「マキノの飴」の製造元がある古い雁木(がんぎ)のまちなみを歩き、池田屋酒造へ。加賀の井酒造からは歩いて約5分。
酒蔵見学はしていないが、お酒の購入はできる。酒蔵周辺の情緒ある通りを散策するのも楽しい。
駅前海望公園や日本海展望台まで足をのばしたら、再び糸魚川駅へ。
糸魚川駅から大糸線で3つ目の根知駅で下車し、約10分歩くと渡辺酒造店に到着。
周囲の自社所有の山林から杉を切り出して、地元の職人たちが造った豊醸蔵では「根知男山」各種や糸魚川の特産品を販売している。2階には試飲スペースもあり、建物の見学もできる。
雨飾山と頸城駒ヶ岳から流れる根知川が蔵所有の田んぼの真ん中を流れ、酒蔵から根知川を挟んだ向かいにはフォッサマグナパークがある。渡辺酒造店の敷地内に糸魚川静岡構造線が走っていることは、11月下旬にテレビ番組「ブラタモリ」でも紹介された。
酒蔵とフォッサマグナをセットで楽しめる貴重な場だ。
再び糸魚川駅に戻ったら、富山方面へ足を延ばして親不知(おやしらず)にも行ってみよう。
道の駅親不知ピアパークの目の前のヒスイ海岸でヒスイを探すのも楽しい。
施設内は食事処も売店も充実。地元産の魚介や海藻、11月下旬から12月には親不知産の荒巻鮭も販売される。
2021年12月1日から22年3月31日までは「あんこうフェア」も開催され、糸魚川市内のホテルや飲食店であんこう鍋やあんこう料理が味わえる。
※写真はイメージです
親不知を満喫したら再び糸魚川駅方面へ戻り、市街地から東に位置する田原酒造へ。
田原酒造では酒蔵見学は行っていないがお酒の購入は可。
頸城駒ヶ岳の山麓に湧く名水「市野々の水」を仕込み水に使っている。
ラストは焼山を源流とする早川が流れる早川谷にある猪又酒造へ。
代表銘柄にもなっている月不見の池は、蔵から車で約5分山手へ向かったところにある藤の名所で、藤の花が月を隠してしまうことからこの名でと呼ばれるようになったとか。
猪又酒造も酒蔵見学は行っていないが購入は可能。
猪又酒造まで行ったら、ぜひ足を延ばしてほしいスポットがある。
それが、農家キッチンひだまり。
※写真はイメージです
地元のお母さんたちが作る、郷土料理の笹ずしとそば、山の幸のメニューを提供。旅に出たら、その土地らしいものを食べたい!という人は大満足するはず。
隣には、あぐ里能生が手がける炭手焼せんべい工房があり、自社で栽培する糸魚川産コシヒカリ能生米で作る生地を丁寧に乾燥させ、炭火で手焼きする本格せんべいを製造販売している
『新潟発R』17号(2021秋冬)でも、ここのせんべいのおいしさの秘密を紹介させていただいた。取材したスタッフはせんべいのおいしさと、農家キッチンひだまりのランチのおいしさに感動して戻ってきた。
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糸魚川の5つの酒蔵を盛り上げようと、地元では酒蔵と酒販店、飲食店、一般の有志で糸魚川五醸の会を立ち上げ、さまざまな発信を行っている。
コロナ禍以前はイベントも多数開催していたが、今年はオンラインでのイベントなどを開催。
11月21日にはオンラインの日本酒祭り「糸魚川五醸の会 糸魚川の酒蔵の魅力を発信!」を開催し、五蔵の蔵元が語り合った。
5蔵のお酒が勢ぞろいする売店としては、糸魚川駅直結の「ヒスイ王国館」内の「糸魚川市観光物産センター」がある。
かまぼこや海藻類など糸魚川の特産品とともに購入し、晩酌に楽しもう。
撮影:『新潟発R』、パルスデザイン、高橋朋子
『本間文庫にいがた食の図書館』運営
株式会社ニール 高橋真理子