7月14日、第37回新潟清酒学校入学式が執り行われた。
場所は新潟市の鳥屋野潟湖畔にある「ホテル湖畔」。
昨年はコロナ禍で一年間休校したため、2年ぶりの入学式となった。
今年は9社9名が入学。
新入生の皆さん、おめでとうございます!
今年度は3学年、27社39名が学ぶ。
ここで「新潟清酒学校って何?」と思った方のために、少しご説明を。
こちらは『新潟発R』2021春・15号の特集「受け継がれる越後杜氏魂」の新潟清酒学校紹介頁。
第3代校長を務めた平田大六さんと、現校長の渡邊健一さんに取材させていただいた。
新潟清酒学校は、1984(昭和59)年に新潟県酒造組合がつくった酒造技能者の教育機関。
時代の流れで越後杜氏集団による出稼ぎや季節雇用がなくなり、越後杜氏の人数も激減。
「このままでは越後杜氏の技能が消えてしまう」と、新潟清酒業界をあげて新潟独自のスタイルをもった、日本唯一の教育機関を生み出した。
入学資格があるのは県内酒蔵に通年雇用されていて、蔵元の推薦を受けた人。
通常は1学年20名定員だが、今年はコロナ禍の対策として、定員を半減した。
現在卒業生は500名を超え、約40人の卒業生杜氏が県内でこだわりの美酒を醸している。
7月14日の入学式で、新入生に向けて式辞を贈る第5代校長の渡邊健一さん(石本酒造)。
7月に入学式を行うのは、酒造りのカレンダーである酒造年度の始まりが7月だから。
卒業式は例年6月に行われ、先月11日に2年ぶりの卒業式が執り行われた。
入学生代表の答辞を述べたのは青木酒造(南魚沼市)の金井昭さん。
清酒学校は3年間、冬期の酒造期間を除いた時期を中心に、1年に約100時間の授業を行う。
授業は新潟市中央区にある新潟県酒造会館や、護国神社に隣接する新潟県醸造試験場で行う。特定の校舎がないのも新潟清酒学校の特徴だ。
入学式後、コロナ禍以前はそのまま2泊3日の合宿講義が行われ、業界関係者とともに外部講師が担当する特別授業を行っていたが、今年は合宿なしで通いの「集合授業」が3日間行われた。
私も年に1回、2時間(今年は1時間30分)講師を務めさせていただいている。
1年生対象の「文章での自己表現 手紙の書き方」だ。
新潟清酒学校校歌を作詞した谷澤龍史先生の後任として、2013年から担当させていただいている。
授業の冒頭で、この一年で手書きの手紙やはがきを書いた人に挙手いただいているのだが、年々それが少なくなっていく。
今年はなんとゼロ!
手紙も日本酒も同じ日本の文化。
手紙(はがきや一筆箋も含めて)を書くきっかけになってくれればという思いも込めて、実習を含めた授業を行っている。
授業の最後には、相手やシチュエーションを想定して一筆箋を使って手紙を書いてもらった。
全く書いていないと言いながら、皆さん心のこもったすてきな手紙!
もらった人はきっと喜ぶはず。
集合授業最終日、他の授業も見学させていただいた。
こちらは1年生の「企業と人」。講師は武蔵野酒造の小林元さん。
1人ずつ自己紹介をし、その後、講師が指名した人は必ず何か質問をしなければならない。
「質問をする」=「相手に興味を持つ」ということで、いかに相手に興味を持ってもらえる自己紹介ができるか、というのが授業の目的のように感じた。
そして、自分は?と、考えさせられた。
2学年の「私の酒造論」の講師は原酒造杜氏の石黒芳和さん。
中越沖地震からの復興、石黒さんが考える酒造りなどを、映像を使ってわかりやすく紹介していた。
こちらは3学年の「討議方法」。
講師は新潟清酒研究会の畠山明さん(吉乃川)と浅野宏文さん(越銘醸)。
具体的な問題のケースが提示され、その課題解決のための方策をグループごとに討論し、結論を出す。
さすがは3年生。
活発に意見を戦わせ、相談し、質問し合い、最終的に自分たちの答えを導き出していた。
3年間で育まれる新潟清酒学校の絆は、卒業後のさまざまな局面で生かされていく。
新潟清酒学校は新潟の宝であり、新潟清酒のおいしさを支える大きな力であると、改めて思った。
『cushu手帖』『新潟発R』編集長
高橋真理子