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コラム 2021.05.26

にいがた酒旅のススメ〈三条市・加茂市・弥彦村・新潟市編〉

日本酒が醸される地を訪ねるリアルな酒旅と、お取り寄せで楽しむバーチャル酒旅を紹介するシリーズの第2弾。今回は県のほぼ中央にある三条市と加茂市、そして越後一宮・彌彦神社のある弥彦村と、県都・新潟市の酒旅へ。リアルな酒旅は、呑むなら電車を駆使して、“買い出し派”はドライブを楽しみながら、レッツゴー! ※★のある酒蔵はオンラインショップがあります。

 

〈ものづくりのまち〉と〈北越の小京都〉の地酒

ものづくりのまちとして知られる三条市唯一の酒蔵が明治30年(1897)創業の福顔酒造。★

代表銘柄は「福顔」と、蔵の目の前を流れる「五十嵐川」。注目のお酒は洋酒の樽で貯蔵した日本酒。ウイスキー、ブランデー、バーボンの3種類。それぞれ個性的な風味を楽しめる。公式サイトでアップしている蔵人が唄う酒造り唄を聴きながら、しみじみと味わいたい。

 

燕三条IC近くの燕三条地場産業振興センター物産館は地酒の種類も豊富。スプーン磨きや包丁とぎなどの体験や鎚起銅器の実演も行っているので、サイトのイベントカレンダーでチェックしてから出かけよう。

 

市の中央を加茂川が流れ、〈北越の小京都〉として親しまれる加茂市には3つの酒蔵がある。

加茂駅前から続く約1キロの通りには8つの商店街が連なり、〈ながいきストリート〉の愛称をもつ。この通り沿いの仲町商店街にあるのが、創業文化3年(1806)の雪椿酒造

雪椿酒造では、加茂山公園のユキツバキから分離した酵母を使った純米吟醸酒「越乃雪椿 雪椿酵母仕込み」を醸している。オリジナル酵母が生み出す味わいを堪能したい。

 

8つの商店街の最も奥にある若宮町商店街にあるのが明治25年(1892)創業のマスカガミ。代表銘柄は「萬寿鏡」。Fは普通酒、Jは純米酒、数字は精米歩合を意味する「アルファベットライン」シリーズは、そのコスパの高さで年代を問わず人気を集めている。

蔵の向かいにはかりん糖で有名な田辺菓子舗があり、加茂川と反対側の谷通りには昭和の趣を残す木造建築や水路などが残る。レトロな空気を感じながら探索してみよう。

 

加茂市のもう一つの酒蔵が明治26年(1892)創業の加茂錦酒造。現在工場は新潟市秋葉区にある。次期蔵元の田中悠一杜氏が5年前に造り上げた新ブランド「荷札酒(にふだざけ)」は、全国的にも注目を集めている。20代の若き杜氏が醸す1本を試してみたい。

 

加茂市のご当地グルメといえばレバーフライ。仲町商店街にある菜工房ヤマダでテイクアウトして、地酒とともに楽しもう。

 

西蒲5蔵の取り組みから目が離せない

弥彦村と新潟市西蒲区の5つの酒蔵では、数年前から合同で山林保護プロジェクトや西蒲酒の陣などの取り組みを行っている。昨年1115日には、弥彦村のヤホールで万全の感染症対策を取って西蒲酒の陣を開催。屋外のマルシェとともに開催されるため、日本酒ファンのみならず家族連れなど多くの人たちが楽しんだ。

 

弥彦村唯一の酒蔵が天保9年(1838)創業の弥彦酒造。代表銘柄「こしのはくせつ」とともに味わいたいのが「彌彦愛國」。復活させた酒米・愛國を使い、弥彦山頂に1本自生するヤヒコザクラから酵母を分離するなど、オール弥彦産の1本だ。蔵で手作りする「やひこじぇらーと」は村内の旅館や土産物店などで購入できる。

 

西蒲5蔵に属する新潟市西蒲区の4蔵は、旧北国街道沿いに位置する。

岩室温泉エリアに明治18年(1885)に創業した宝山酒造の代表銘柄は「宝山」。コシヒカリを使った酒にいち早く挑戦した蔵でもある。(酒蔵見学可・要予約)

 

書家の巻菱湖(まきりょうこ)生誕地の福井集落にあり、1636年に三根山藩主に献上の記録が残る、峰乃白梅酒造。代表銘柄「峰乃白梅」とともに「菱湖」も人気だ。

 

角田山麓に明治23年(1890)に創業した越後鶴亀の代表銘柄は「越後鶴亀」。ワイン酵母を使った「越後鶴亀 ワイン酵母仕込 純米吟醸」は女性を中心に人気を集めている。

 

明治32年(1899)創業の笹祝酒造★の代表銘柄は「笹祝」。酒米・亀の尾を使った「竹林爽風」もファンが多い。挑戦醸造「笹祝 challenge brew」では、毎年テーマを持った新しい酒を生み出している。(酒蔵見学可・要予約)

 

 

10月31日まで(期間中の運行日時は要確認)運行している「にしかん観光周遊ぐる~んバス」を利用して、ワイナリーとともに巡るのもおすすめだ。

 

新潟市で生まれる多彩な味わい

西蒲区に隣接する西区には3つの酒蔵がある。旧北国街道沿いの酒蔵もあるので、西区~西蒲区へ街道ドライブを楽しみながら、見学はできなくても、地酒が醸される土地の風情を味わってみるのもいい。

明治32年(1899)創業の高野酒造★の代表銘柄は「白露(しらつゆ)」「越路吹雪」。酒粕を原料にした焼酎も製造している。近くにはラムサール条約湿地「佐潟(さかた)」があり、四季折々の植物や水鳥が楽しめる。

佐潟の夕景

天保3年(1832)に旧巻町で創業し、その後現在の内野地区に移転した「鶴の友」の蔵元・樋木酒造。蔵の母屋は県の登録有形文化財となっている。

同じ内野地区にあるのが大正元年(1912)創業の塩川酒造。代表銘柄の「越の関」とともに、海外向けや新潟大学とのコラボ商品などを企画している。(酒蔵見学可・要予約)

旧西川町にある明治42年(1909)創業の朝妻酒造★では「雪の幻」「雪の風雪」などの地酒を醸している。

 

新潟駅から徒歩圏内にあり、酒蔵見学(要予約)もできるのが明和4年(1767)創業の今代司酒造★。代表銘柄は「今代司」。清酒のほか、乳酸菌醗酵酒粕「さかすけ」を使ったドリンクやノングルテン&ノンアルコールの米粉甘酒なども製造。直売店で購入できる。

近くにある沼垂テラス商店街沼垂ブルワリーも訪ねてみよう。

 

新潟市江南区、旧亀田町に明治40年(1907)に創業した石本酒造★の代表銘柄は全国的にも知られる「越乃寒梅」。地元・亀田郷の人たちに愛される酒を醸し続けている。

 

旧豊栄市に明治41年(1908)に創業したDHC酒造★では、母屋の一部を改装した販売所「越後の里 嘉山亭」で、DHC酒造の多彩な清酒やオリジナルグッズを販売している。

DHC酒造から徒歩3分ほどの場所にあるのが昭和7年(1932)創業の越後酒造場。代表銘柄は「甘雨」「越乃八豊」。「八豊」には豊栄の末広がりの発展への願いが込められている。

この2蔵の近くでは江戸時代に始まったといわれる露天市・葛塚市が毎月1・5・10・15・20・25日に開かれている。車で10分弱のところには、オニバスの国内北限である福島潟もある。

福島潟

秋葉区に昭和23年(1948)に創業した村祐酒造の代表銘柄は「花越路」「村祐」。夏の疲れた身体にやさしい夏季限定の燗用の酒「夏美燗(なつみかん)」など個性的な商品が魅力だ。

 

酒蔵がある地を訪ねたら、その土地で地酒を販売する酒屋も巡ってみよう。店内で有料で試飲が楽しめる「角打ち」がある店や、定期的に蔵元を招いて試飲会などを開催する店など、個性あふれる酒屋が増えているので、足を運び、店主と酒談義を楽しもう。

写真はイメージです

cushu手帖』『新潟発R』編集長

高橋真理子

cushu.jp

n-hatsu-r.com 

写真協力:公益社団法人新潟県観光協会、StudioActivist、弥彦観光協会