新潟県酒造組合の公式サイトがリニューアルし、乳酸菌醗酵酒粕「さかすけ」を紹介する動画がアップされていること、ご存じですか?
「さかすけ」とはどんなもので、どのくらいスゴイものであるか、さらに「さかすけ」を使ったレシピを、新潟県醸造試験場の金桶光起場長と料理研究家の中島有香さんが紹介しています。ぜひご覧ください。
乳酸菌醗酵酒粕「さかすけ」は発酵食品である酒粕をさらに乳酸菌で発酵させることで、ヨーグルトのような形状になり、酸味のある味わいに。製造工程で酒粕を蒸すため、アルコール分もなくなります。
約20年前、金桶場長が「さかすけ」を発案したきっかけは、栄養価も機能性も高い酒粕が廃棄されるなど、行き場を失っていることがもったいないと思ったことだそうです。
酒粕は搾り方によって板粕、バラ粕など形状が違います。日本酒の種類によっても味が変わってきます。
写真左がもろみを搾ったときにできる酒粕(新粕)、右が新粕を熟成させた酒粕(練り粕、踏み込み粕、夏粕など呼び名はさまざま)で、漬け物に使われることが多いとのこと。
今までもさまざまなレシピ本やテレビ番組で、整腸、美肌、老化防止など、発酵食品である酒粕の素晴らしさが紹介されてきました。
NHKのテレビ番組『ためしてガッテン』で取り上げられ、酒蔵から酒粕が消えた!と言われたこともありました。
現在は、酒粕が不足している酒蔵もあれば、余っている酒蔵もあり、それぞれ状況は違うようです。
一つだけ確実なのは、日本酒のもろみを搾ったときに必ず酒粕は誕生するということです。
新潟県の酒蔵では丁寧に酒米を磨き、搾りすぎて雑味が出ないよう、きれいな味わいを求めて贅沢な酒造りをしています。
その工程で生まれる酒粕を使わないなんて、もったいないですよね。
ただ、酒粕の独特の香りが苦手、板粕は使いにくいなどの問題点があるのは確かです。
それを解決すべく誕生したのが「さかすけ」。
使いやすい形状から、料理への活用の幅が広いのも、「さかすけ」の大きな魅力です。
「にいがた酒の陣2019」ガイドブック『cushu手帖春夏号』の「居酒屋ゆかちゃん」で中島有香さんが紹介してくれた「魚介のさかすけグラタン」(上)と「さかすけのチョコケーキ」(下)。程よい酸味がクセになる味わいです。
少し前に、酒粕や「さかすけ」について、改めてじっくりと取材をさせていただく機会があり、金桶場長、さかすけ推進協議会の瀬戸晶成委員長(緑川酒造)はじめ、「さかすけ」を製造している酒蔵の方、商品化しているメーカーの方などさまざまな立場の方の話をお聞きしました。
この取材の中で、はっとした言葉がありました。
「酒粕と『さかすけ』を差別化する必要はない」
メーカーの方からのこの言葉に、目からウロコが落ちました。
それまでは、乳酸菌で酒粕を発酵させたすぐれた食材「さかすけ」をどうやって伝えていけばよいのか考えていました。しかし「世間一般には酒粕もまだまだ浸透していない食材であるので、酒粕を知ってもらったり、酒粕が苦手な人に向けての食材として『さかすけ』が窓口となればいい」という意見に、深く納得しました。
そういえば、酒粕の形状を使いやすくしたクリームタイプの商品も見かけるようになりましたね。
以前酒粕レシピ本を編集したときに、1日50グラムを目安に毎日食べてもらおうと、中島有香さんが提案したのが、クリームストックとキャラメルストックでした。
クリームは酒粕を熱湯で溶いて、クリーム状にして保存しておく方法。
キャラメルは板粕をキャラメルのようにカットして、クッキングシートで包んで保存する方法。
これらを毎日さまざまな料理に活用して、酒粕を調味料として楽しんでもらおう!というのがこの本のコンセプトでした。
近頃の私のブームは焼き酒粕です。
ズボラな私は、いかに楽ができるか考え、魚や野菜などをグリルで焼くときに、冷凍保存してある板粕をちぎって一緒に焼いてしまう技?を考案しました。
酒粕は冷凍してもかたくならないので、簡単にちぎれます。
ちょっと焦げ目がついて香ばしく、しかもやわらかくなるので、みそ汁に入れたり、サラダにトッピングしたり、いろいろな料理に活用できて、面倒くさがりな方におすすめです。
最近では酒粕を見たことがない若い方たちもいると聞きます。
これからは、「さかすけ」をきっかけに酒粕に出合う人が出てくるかもしれませんね。
どちらもスゴイ食材であることに違いはありません。
ぜひ身近に置いて、さまざまな楽しみ方で味わい、元気できれいになりましょう!
『cushu手帖春夏号 にいがた酒の陣2019版』「居酒屋ゆかちゃん」より。「さかすけポテサラ切干大根入り」。このレシピは公式サイトの動画で公開されています。
『cushu手帖』『新潟発R』編集長
高橋真理子