旧長岡藩主・牧野家からの酒蔵を受け継ぐ柏露酒造 果実リキュールなど新たな挑戦も
柏露酒造

柏露酒造HAKURO shuzo

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PICK UP 2024

創業宝暦元年。270年を超える大名蔵として、酒造りの心を未来へと繋いでまいります。

冬の厳しい寒さと降り積もる雪が空気を清める

柏露酒造が蔵を構える長岡市は、昔から長岡藩の城下町として栄えてきた地。また越後平野の中央に位置し、良質な米の集散地としても賑わってきた。この地域は、冬の厳しい寒さに加えて日本でも有数の豪雪地帯であり、降り積もる雪が空気を清める。清酒造りに最適な自然環境である市内には現在も新潟県内で最多の16もの日本酒蔵があり、技を競っている。

目指すは芳醇で味わい深く上品で奥深い酒

出荷先は県内よりも首都圏の百貨店などでの取り扱いが主となっている。
代表銘柄は『柏露』。贈答品によく選ばれているという。
「酒質は、芳醇で味わい深く上品で奥深い酒を目指しています」というが、なるほど、三つ柏の紋をあしらった『柏露』のラベルには高級感が漂い、誰かに贈りたくなる趣がある。

紋は旧長岡藩主の家紋から

大手の流通に乗っているため首都圏で知られる『柏露』だが、これからは地元の人たちにも親しんでほしいという

この三つ柏、じつは旧長岡藩主牧野家の家紋。牧野家は江戸時代から明治維新までの250年余り、長岡の地を統治した大名家だ。
1882年その牧野家から酒造蔵を譲り受け、三つ柏紋の使用と商品名「柏露」を継承したという経緯が『越乃柏露』にはあった。
もともとこの蔵の創業者は長岡藩の御用商人。江戸時代の1751年に「越中屋」として造り酒屋を開業した。『柏露』には、そうした関わりから生まれた背景を持つ由緒ある銘柄。贈答品に選ばれる品格も頷ける。

進化し続ける『氵』さんずい

伝統を守りながら新しい日本酒の世界を拓く『氵』さんずい

柏露酒造が蔵を構える長岡市は、昔から長岡藩の城下町として栄えてきた。長岡駅から車で10分、「長岡藩主牧野家資料館」には牧野家の繁栄の跡が残され、300分の1のスケールで再現された長岡城の偉容も見ることができる。
また越後平野の中央に位置し、越後の良質米の集散地としても賑わってきた。市内には、現在も新潟県内で最多である16の日本酒蔵が点在する。
こうした激戦地にあって埋もれないためには、個性ある商品の開発も課題となる。『氵』さんずいはその一例。
「氵(さんずい)」偏は水を表し、他の漢字につけられてその意味を成す。酒蔵の命とも言える水と、伝統的な技術が出会うことで醸される清酒造りの原点を表現したブランドが『氵』さんずいだ。
2015年の発売以来、多くの支持を得てきたが、さらなる進化を目指し2021年4月にリニューアル。日本酒を愛するすべての人たちの“明日を潤す一滴”となることを願い、オール新潟にこだわり抜いた逸品に仕上げた。通年商品の「瓶火入れ」と季節限定の3アイテム(直汲み・生原酒・生詰め)をそれぞれ飲み比べることで、製造方法の違いも楽しめるという。
個性と言えば見た目も印象的。ラベルには筆で大書された「氵」。初めて目にすると一瞬、意表をつかれる。

時代の変化を読み、研究を重ね、新たなうまい酒を創り出す

上品な甘さと花火のように発泡する味わいでファン急増の「柏露花火」

近年、アルコール市場においても消費者の嗜好の多様化が進んでいる。柏露酒造では、酒造りの伝統を守りながらも、変動する消費者のニーズと期待に応えるべく、新技術や新商品の研究開発に積極的に取り組んできた。「発泡清酒」もそのひとつだ。
柏露酒造の発泡清酒の歴史は、研究開発を開始した2008年から始まる。同年10月には初の商品化を実現した。2015年、仕込み方法を変更した「スパークリング純米 柏の花言葉」を発売。 2017年には、飲みやすさに重点を置き、甘味と酸の絶妙なバランスを追求した「発泡純米清酒 HANABI」を発売した。
製法のこだわりが「瓶内二次発酵」。開発当初は、炭酸ガスをお酒に注入し溶け込ませるカーボネーション方式にも挑戦した。様々な製法を試みた中で、ガス圧の安定・管理が難しい瓶内二次発酵を採用。その決め手は、後入れの炭酸では味わえない酵母由来の旨みときめ細かく繊細な発泡感だった。
2022年、市場の活性化・ブランドの拡大を図るべく、酒質・味わいをブラッシュアップし、蔵名を冠して誕生したのが「柏露花火」だ。JR東日本の観光列車「越乃Shu*Kura」1号車・食事付旅行商品の2023年シーズンのウェルカムドリンクにも採用された。にいがた酒の陣や越後長岡酒の陣でも話題となり、県内外問わず人気が高まっている。

大名蔵としての地元密着の活動と伝統の継承

初開催のイベントで1,300人を超える柏露ファンが集まった

2024年4月には『柏露酒造 蔵まつり 第1回発酵フェス2024』を開催。構想から4年、幾度も中止を余儀なくされてきたが、満を持して開催した第1回の来場者数は1,300人超。目標の倍近い数字に嬉しい悲鳴が漏れた。来場者は日本酒と地元飲食店のおつまみ、JAZZ演奏、ダンスパフォーマンスに酔いしれた。
蔵まつりの目玉は、若手蔵人を中心に企画した「発酵フェス限定酒」。「雪囲い仕込み」「超甘口仕立て」「呑口超辛口仕立て」の3アイテムを発売。経験豊かなベテランの技と若手の新しい感性の見事な連携で3アイテムとも好評を得た。このように酒造りはもちろん、杉玉づくりや大名蔵としての心得も若手へ引き継がれている。「酒造りは人づくり」。酒造りに携わる者は時とともに変わるが「多くの人々に喜ばれる美味しい酒を造る」という姿勢はこの先も受け継がれていくだろう。
今後はより一層、酒造りもイベントも従業員一丸となって全力で取り組んでいくという。以下は蔵元お勧めの商品。

取材・文 / 小島岳大