女性の醸造家・専門家・ジャーナリストがブラインド審査する「フェミナリーズワインコンクール2024」の日本酒部門にて、弊社「雪中梅 雪中貯蔵純米原酒」が金賞および審査員特別賞を受賞しました。
『雪中梅 普通酒』を現在の酒質に定めたのは、酒蔵4代目の三郎治。地元・上越市に密着した地酒であることを念頭に、飲み方と酒肴を選ばない、日々の暮らしを支える酒を良しとした。
丸山酒造場の代表取締役は丸山三左衛門さん。古風な名前なのは、家系に伝わる名前の一つを襲名しているため。創業明治30年、7代目当主として120年の歴史を背負っている。
蔵に戻ったのは2008年。「三人兄弟の長男で、父早世もあって、幼い時分から跡を継ぐ可能性は考えていました。弟2人が別の道へ進んだので、結果として、私が残ったという印象ではありますが」と語る。
2015年、代表に就任。それまでは造りにも携わったが、主に蔵元を務めていた母上の補佐役だったという。そんな経緯もあってか、気遣いがとても行き届いている。
「茜蔵でちょうど蒸米が上がる時間です」と、取材当日、社長自身が玄関先で待ち構えていて、本蔵と少し離れた茜蔵に案内してくれた。仕込み風景を見られるように、という配慮だったに違いない。
30年ほど前に建てられた茜蔵では、製造量の75%を占める普通酒を醸す。敷地内に、自動化ラインを導入した瓶詰め工場、こだわりの米を保管する米倉庫も点在する。
ちょうど蒸し上がった米が、大きな甑からは蒸米が手掘りされていた。立ち上る湯気の中で、蔵人たちは慣れた手つきで米をさらい、放冷機へと移す。労働力軽減の名の下に「もっこ」が多くの蔵で使われるようになった今、手掘り作業の光景はそうそう見られるものではない。
忘れそうになるが、ここで造られているのは、普通酒。
「丁寧に醸す、手間と暇を惜しまぬこと、誠実な仕事をする」というモットーが、早くも垣間見えた。
しかも、今も手間がかかる「蓋麹法」「箱麹法」による麹造り。これらの技法が当り前に伝承されているのは、前身が麹屋だったことに由来するのだろうか。
放冷機から出てきた蒸米は布にくるんでリフトに乗せ、2階の麹室に引き込まれる。このリフトは30年も前に導入されたというのに、麹は江戸期の麹屋時代同様、昔ながらの手造りだ。
譲れることと譲れぬことが明確なのも、心揺さぶられた事実だった。
主要銘柄『雪中梅』は昭和初期に生まれた。「春の兆しを感じさせるいい名前だと思います」と蔵元。寒さに負けないしなやかな生命力、寒造りの酒造り、未来への希望などをイメージさせてもくれる。
4代目の三郎治は、地元の人たちのために、「農作業で疲れた体を癒すには甘口がいい。だけど、翌日の仕事に響くから飲み過ぎてはいけない。懐が痛んでもいけない。それには、2合も飲めば満足できるような酒」と、『雪中梅』を淡麗旨口の普通酒とした。
「基本晩酌酒なので、合わないものを探すほうが難しいです。野沢菜の漬け物、その古漬けを使った粕汁などが定番。このあたりの地のものでは、たらこの糀漬けや白身魚メギスのフライなどもいいですよ。晩酌には贅沢かもしれませんが、タイの薄作りなんかともイケます」
甘口だがキレよく重くない。焼き鳥や串カツの脂も流してくれる。懐深い姿が見えてきた。
頸城杜氏の流れをくんでいるという杜氏は50代の働き盛りだ。
蔵人たちが、最終的にはオールマイティーに造りをこなせるように、仕事の持ち場はおよそ5年で移動するローテーション制。作業経験の蓄積で、担当部署間の連携が良くなるという。通年雇用の蔵人たちは、夏の間は蔵のメンテナンスや山の整備に携わる。
『雪中梅』の酒質に関与するきめ細かく柔らかい水は、東頸城丘陵の西端に位置する里山が水源。この水を守るには山の手入れが不可欠で、蔵人たちは夏場、下草刈りや間伐にも勤しむ。
間伐材を用いて酒造り道具や蔵の備品を造ったりもしている。「物作りが好きで得意な人たちが多いんですよ」と蔵元は笑みを漏らした。
最後に蔵の設備について尋ねると、特筆すべきは独自開発した洗米吸水装置とのこと。酒米は米質に応じて吸水率や浸漬時間が変わるが、分析データの蓄積により再現性を高める他、産地や年ごとに違う米質にいち早く対応するための仕掛けである。
丸山社長:『雪中梅』の通年商品は普通酒と本醸造と純米酒の3種類。ほかに夏季限定の特別純米酒、そして冬季限定の特別本醸造と大吟醸の3種類を季節限定商品として発売しています。その季節ならではの旬の味わいを楽しんでいただきたいと思います。また、一部地域限定商品が発売されていることもあります。
以下は、『雪中梅』ラインナップの中から、蔵元お勧めの3本だ。
好評により通年商品化した純米酒。酒米・「五百万石」を原料に醸し、酸による軽みが持ち味。冷酒でも飛び切り燗でもイケる。合わせる肴はオイスターがお勧め。生でもフライでもいい。コンテやペコリーノなど塩気と旨味の強いチーズにもよく合います。
晩酌酒として地元で圧倒的人気、丸山酒造場の主力商品となっている。精米歩合68%のこしいぶきを使い、アルコール度は15%台。
柔らかな口当たりと甘みがありながら、キレのよい後口が特徴。煮魚や野沢菜漬けをはじめ、合わせる料理はオールマイティー。
夏季に出荷される季節限定商品。原料米は「山田錦」と「五百万石」、精米歩合を55%にして綺麗さを求めた。穏やかな香り、まろやかで綺麗な甘みとバランスがとれた酸が特徴。冷酒がお勧め、枝豆や鮎めし、鯨汁に合わせてみてと蔵元。
取材・文 / 八田信江(2018)