新潟駅から徒歩15分、国内・海外から毎日たくさんのお客様に酒蔵見学を楽しんでいただいています。これからも今の時代に合う日本酒を提案して参ります!
明和4(1767)年創業。本格的に酒造業に取り組んだのは、明治中期のことだ。蔵のある沼垂(ぬったり)という地区には酒造に適した水があり、港が近く酒の運搬に便利だったことなど、好条件が揃っていた。
かつては日本の表玄関だった日本海に面する町。北前船の航路もあり、発展した町は多い。その中でも、米どころという地の利を背景にひと際栄えたのが新潟市だった。
新潟県は、幕末から明治にかけては、江戸を超える人口だったという。
新潟市には日本で三指に入ると言われた花街があり、そこに集う舌の肥えた料理人や旦那衆をも唸らせる酒を、と励み、鍛えられてきた酒蔵だ。
高級店ほど、食事を引き立てる良い食中酒を求めるもの。すっきりと淡麗な、新潟らしい味が確立され、今に引き継がれている。2006年からは、さらに良い水を求めて、越後菅名岳の天然水を運び、使用している。
純米酒をメインとしている蔵もまだ少ない新潟にあって、2006年から全量純米の特定名称酒のみに切り替えた今代司。純米酒ならではの米の旨みが生きた味と穏やかな香りの食中酒が揃う。
それに加え、すっきりと軽やかに仕上がっているのは、越淡麗や五百万石といった淡麗に仕上がる新潟県産酒米を使っていること、そして高い技術のたまものだ。
「今代司酒造」という社名は、今の時代を司るという意味でつけられた昔の銘柄名が元になっている。現在では、「常に時代と共に」=「今の時代に合った酒とその楽しみ方を提供する」、と解釈し、次々と斬新で魅力のある作品を発表している。
古田:この、沼垂(ぬったり)という地区は、かつて港町で、いろんな文化が入ってきた入り口であり、新しい文化と長く続く伝統が混ざり合って新しいものが生まれてきた場所。常に時代を捉えてきた場所なのです。
そこで長く酒蔵としてやってきたことの意義は大きいと思います。だからこそ、時代に合った新しいものを取り入れて、生み出して、発信していかなければならない。
「『今代司』があってよかったね」、とみなさんに言っていただけるような会社になれたら、と思っています。
同社が酒を通して成したいこととして掲げているのが、「結ぶ」ということ。古(いにしえ)と今、人と人、地方と都市、それらを結ぶ酒でありたい。 数年前に一帯の区画整理があり、それを機に歴史と伝統を尊重しつつ、現代にも適した形の社屋に改築した。
その際、蔵見学も積極的に受け入れることとし、見学コースがセンス良く見やすく整備されている。
それは、新潟駅からも徒歩15分という近い場所にあり、新潟を訪れた人たちにとっては入り口、そして、最初に出合う酒蔵となるだろう、ここで、新潟酒の良さを知って持ち帰ってほしいという想いから。
歴史を感じさせる展示物は、現代と古を結び、同時に、訪れた人たちと新潟を結ぶ一つの形でもある。蔵元が自信を持って勧める日本酒を、いくつか紹介しよう。
衝撃的とも言える錦鯉ボトルで話題を集め、グッドデザイン賞ほか世界の名だたるデザイン賞を受賞した。
かつて酒蔵も酒屋も水で薄めた酒を出し、利ざやを稼ぐことが横行して、金魚でも泳げるような「金魚酒」と揶揄された時代に、それをせず「今代司は『金魚酒』ならず 威風堂々たる『錦鯉』」と評価された誇りを体現している。
真っ白で中の見えないボトル同様、先入観なく飲んで欲しいと、スペックは必要最低限の公開。魚たちが泳ぐ清らかな川を思い起こさせる味わい。実は、錦鯉の模様、緋斑にもちょっと仕掛けが………。
半世紀前までは当たり前だった木桶で仕込みを行い、全量五百万石を使用、水はもちろん越後菅名岳の天然水、と自然に立ち返り、かつての人たちも味わったであろうという味を求めた酒。
ほんのりと杉の香りも楽しめ人気急上昇中だ。見ての通り、ラベルに使用されているのは経木。一枚一枚丁寧に手貼りされている。
シャブリのようにすっきりとしていて、牡蠣料理に絶対合う日本酒を、というコンセプトで開発を続け、4年目にしてやっと完成を見た。
アルコール度数12%と低めの設定で、酸味の効いた味は白ワインを思わせるが、敢えて日本酒王道の造りの中で見つけた、牡蠣に合う直球の日本酒。
取材・文 / 伝農浩子