旧長岡藩主・牧野家からの酒蔵を受け継ぐ柏露酒造 果実リキュールなど新たな挑戦も
柏露酒造

柏露酒造HAKURO shuzo

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PICK UP 2022

柏露酒造のお酒を呑んでいただいた皆様に笑顔になっていただけるよう、従業員一同笑顔で心を込めて酒造りを行っております。創業271年を迎えた柏露酒造を今後とも宜しくお願いいたします。

杜氏の野田晋一郎さん

柏露酒造が蔵を構える長岡市は、昔から長岡藩の城下町として栄えてきた地。また越後平野の中央に位置し、良質な米の集散地としても賑わってきた。市内には現在も新潟県内で最多の16もの日本酒蔵があり、技を競っている。

目指すは芳醇で味わい深く上品で奥深い酒

「当社の出荷先は県内よりも首都圏が圧倒的に多いんです。都内の百貨店などでの取り扱いが主となっています」
と、杜氏の野田晋一郎さんは柏露酒造の販路について紹介する。 主な銘柄は『柏露』。贈答品によく選ばれているという。
「酒質は、芳醇で味わい深く上品で奥深い酒を目指しています」というが、 なるほど、三つ柏の紋をあしらった『柏露』のラベルには高級感が漂い、誰かに贈りたくなる趣がある。

紋は旧長岡藩主の家紋から

大手の流通に乗っているため首都圏で知られる『柏露』だが、これからは地元の人たちにも親しんでほしいという

この三つ柏、じつは旧長岡藩主牧野家の家紋。牧野家は江戸時代から明治維新までの250年余り、長岡の地を統治した大名家だ。
1882年その牧野家から酒造蔵を譲り受け、三つ柏紋の使用と商品名「柏露」を継承したという経緯が『越乃柏露』にはあった。
もともとこの蔵の創業者は長岡藩の御用商人。江戸時代の1751年に「越中屋」として造り酒屋を開業した。『柏露』には、そうした関わりから生まれた背景を持つ由緒ある銘柄。贈答品に選ばれる品格も頷ける。

生まれ変わる『氵』さんずい

「伝統を守りながら新しい日本酒の世界を拓く」新杜氏の挑戦

柏露酒造が蔵を構える長岡市は、昔から長岡藩の城下町として栄えてきた。長岡駅から車で10分、「長岡藩主牧野家資料館」には牧野家の繁栄の跡が残され、300分の1のスケールで再現された長岡城の偉容も見ることができる。
また越後平野の中央に位置し、越後の良質米の集散地としても賑わってきた。市内には、現在も新潟県内で最多である16の日本酒蔵が点在する。
こうした激戦地にあって埋もれないためには、個性ある商品の開発も課題となる。生まれ変わる『氵』さんずいはその一例。
「さんずい偏は水を表し、他の漢字につけられて意味を成します。蔵の命ともいえる水と、伝統的な技術が出合うことで醸される清酒造りの原点を表現しました。なんだろうと思ってもらえたら、それだけで第一段階クリアです」
ラベルには筆で大書された「氵」。たしかに初めて目にすると一瞬、意表をつかれる。

地酒蔵として地元密着の新たな動き

個性鮮やか、贅沢仕様のリキュール

柏露酒造の酒は多くが県外に出てしまうが、近年は地元密着志向が顕著。2017年には長岡を本拠地とするプロバスケットチーム『アルビレックスBB』の選手を迎え、ファンと共に蔵人の田んぼで田植えを行った。
また中越地震で大きな被害を受けた長岡の蓬平温泉では、「女将の会」を中心に復興のシンボルとして花桃を植栽しているが、温泉旅館とのコラボで桃のリキュールを開発。
イメージキャラクター「よももちゃん」をあしらった『桃のお酒』が誕生し、温泉宿では食前酒として提供されている。
清酒ベースの白桃リキュールで、甘すぎずさっぱりとして爽やかと好評のようだ。 アルコール度数8%、桃ジュースのような香りというのも女将たちに人気の秘密らしい。
もうひとつ、女性のハートをつかんでいるリキュールが『W柚子』。大分産と宮崎産の2種のユズを使っている。 甘みと香りの2種のユズを贅沢にブレンドし、深みある味わいに仕上がった。香りと味わいをダブルで楽しめる柚子酒というわけだ。
リキュールは現在5アイテム。375mlは蓬平温泉とのコラボのよもも。500mlで甘み・香りの2種の柚子を贅沢にブレンドし深みのある味わいの「W柚子」・とろりとしたジューシーな桃の甘さを感じる「ももざけ」・芳醇なぶどうの味わいが感じられるさっぱりとした甘さの「シャルドネ」・新潟亀田の藤五郎梅を柏露の純米大吟醸でじっくり寝かせ丹念に仕込んだ梅酒「眠り梅」というラインナップだ。

製造比率は特定名称酒の割合が多く、特に純米酒に力を入れている。

「より美味しい酒をより多くの人々に味わってもらいたい」をモットーに酒造りに励んでいる

30代から70代までの蔵人はいずれも地元の稲作農家で、五百万石などの米作りに携わる。
こうした兼業農家の蔵人は、米本来の旨みを大切にする柏露酒造にとって欠かせない存在となっている。
販売しているお酒の種類としては、普通酒よりも特定名称酒の方が多く、特に割合を占めるのは“純米酒”である。製造工程で重視していることを尋ねた。
「なんといっても麹造りでしょう。自動機での乾燥ではなく、酒種によって棚、箱、蓋を使い分けています。また半仕舞に日仕舞を取り込み、酒造期間をできる限り寒冷期に集中させるようにしています」
地元越後杜氏の円熟した技と若手パワーの連携で、近代的設備も導入しながら、手造りの良さを活かした酒造り。
また年間を通じて、試飲やお買い物ができる蔵見学も実施している。(要予約・無料・平日のみ対応)  以下は蔵元お勧めの商品。

取材・文 / 小島岳大