伝統の技術を継承し、海の幸・山の幸が豊かな上越。その幸に合う酒造りを目指します。
上越酒造

上越酒造Joetsu shuzo

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PICK UP 2024

2024年で創業してから220年が経ちました。

人に寄り添う酒造りを

上越人の気質のような「遠慮深い」、やさしい味。そんな味わいのお酒を生み出すのは、昔から涸れることのないやさしい味わいの井戸水。そして最新設備による温度管理。通年で仕込みができるので、少量ずつ出荷するフレッシュローテーションも可能に。お酒は、嬉しいとき、哀しいとき、楽しいとき、どんなときも人とともにあるもの。親しい友のように、人の心に寄り添うお酒を造り続けます。

一造り目から鑑評会で優秀賞に

和釜に甑、槽搾り・袋吊りといった伝統的な酒造り

名誉杜氏である飯野さんが、杜氏になって最初の造りから大吟醸に取り組み、しかも優秀賞まで取ってしまったというから驚く。
平成5年、高齢だった杜氏が辞めることになり、「蔵元が杜氏を務めるのが一番確か」と周囲に説得された。杜氏の指導に加え、周囲の人たちや新潟県の試験場などに学んだり、相談したり、なんとか1年目の造りに漕ぎつけた。
ところが、年度半ばで先代が倒れ、手を離さざるを得なくなった。本格的な造りは翌年度から、さらに社長に就任もして、蔵元杜氏となったのだ。
「吟醸酒には、もちろん興味があったけれど、何年かして自信がついてから、と思っていた。ところが、試験場の先生が、最初から挑戦しろ、と」
要所は丁寧に教えてもらいながらではあったが、なにしろ、ほとんど一造り目と言っていい時。しかもサポートの蔵人には、ほぼ素人のご近所の方々も。
しかし、さすが新潟の指導体制は万全だ。諸先輩や先生の教え通り素直に造ったのがよかったのか、元々才能に恵まれていたのか。
初めて造った『越後美人 大吟醸』は、1995年の「第77回関東信越国税局酒類鑑評会」で優秀賞を受賞。「最初の受賞で、杜氏になり、酒蔵を続けていく自信がついた」という。

創業220年の紆余曲折

古式を大切に今様を探る、心込めた酒造り

ほとんどが槽搾りで

その歴史の重さを感じているのか、飯野さんがいつも心に留めているのは、「古式を大切に今様を探る、心込めた酒造り」をすること。
「素人同然だった自分が、思った酒を造れるようになったのは、心配してくれた先代杜氏の紹介で、本来は入れない杜氏組合に入れてもらったこと」
研修旅行や鑑評会などにも、隔てなく一緒に学ばせてもらったことが大きいという。飯野さんの人柄ゆえかもしれないが、厳しいばかりでなく、助けてあげようという気持ちを優先した、人に余裕のあった時代なのかもしれない。

事業承継を通じて

工場長:酒造りで大切な麹やもろみの温度管理がパソコンやスマートフォンで確認出来るようになり、状況に応じた判断がスムーズに行えるようになりました。また、新たな設備では四季醸造が可能となり、少量ずつ仕込み、搾るフレッシュローテーションが可能になりました。それでも仕込みに関する部分は人の「手」と「勘・感」が頼りです。微生物と良好な関係を築いて、より良いお酒を造り続けたいと思っています。

「人に寄り添う酒」を受け継ぐ

新潟を代表する産業である「日本酒(清酒)」は、「國酒」と呼ばれ日本を代表する世界に誇るべき伝統文化です。
200年以上の伝統ある酒蔵の事業を承継し、先代からの直伝により、これまでと変わらない「人に寄り添う酒」を受け継いでいきます。

取材・文 / 伝農浩子