蔵人たちのこだわりが生みだす『越路吹雪』オリジナル酵母と信濃川が育む米と水の恵み
高野酒造

高野酒造TAKANO shuzo

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PICK UP 2018

見た目の派手さよりも中身で勝負。じんわりとくる……。そんなお酒が長く愛されるようにも思えます。それがもともとの日本酒の良さじゃないかって。温故知新、昔からある味わいが新潟の酒、高野の酒といわれるように精進いたします。

「日本酒は人生を豊かに、楽しくしてくれるもの。うちのお酒が皆様の一杯になってほしい」(高野社長)

明治32年9月8日。二十四節気のひとつ、白露の日に創業を始めた蔵は『白露(シラツユ)』という名の酒を醸しはじめ、118年。
今、『越路吹雪』を掲げる高野酒造では、40代の杜氏を中心に高品質で消費者に愛される酒造りを行っている。

微生物が育つ環境を整えるために

明治、大正、昭和、そして今。各時代の微生物が高野の酒を育ててくれている。そのサイクルを私たちは守るのみ。

「酒造家は自分たちが酒を造っていると思いがちですが、じつはそうじゃない。麹菌と酵母菌、その2つの微生物が酒を造ってくれるのです。

だから我々がこんな酒を造りたいとあれこれ計算しても、その通りになることはほとんどない。主役である微生物たちにいかにうまく働いていただけるか。その環境を整えるのが仕事です」
人は微生物のサポート的存在。それが高野社長の考えだ。「自然の流れを見守る。これが難しい。ただ眺めているだけでは微生物はご機嫌になってくれません。温度に湿度、食料となる原料の状態を最善に保つのは、子育てと似ている」。

切磋琢磨し意見をぶつける

こうしたい!と蔵人全員で造りの意見交換は日常茶飯事。それが高野流の世界です。

微生物に最高の環境については社長も従業員も関係なく、意見を言い合うのも高野流。

「みんな若く元気がいい。それぞれのこだわりもあり、意見をビシバシ言ってくれる。いい意味で切磋琢磨できる情熱あふれる仕事場なのだが、言い方を変えればお互い頑固になることも。まあそれも全て微生物への愛情ですから、仕方ないですね」

豊かな自然の恩恵を活かして

世界から認められる最高の水源地。この地で育つ酒だからこそ、最高の味わいを醸すのみ。

蔵は新潟市の西部に位置し、近くにはラムサール条約湿地のある佐渡弥彦米山国定公園も。

「とにかく水資源に恵まれています。新潟には信濃川水系と阿賀野川水系がありますが、うちは信濃川水系。非常に水が軟水でミネラル分が少ないので、雑味のない淡麗な味わいの酒に仕上がります。昔から川が運んでくれた肥沃な土壌は新潟の宝。米どころといわれるのは、2つの川のおかげです。

作り手が見える米作りでよりよい酒を

契約農家7軒と共に2017年に発足させた「越後酒米栽培研究会」。熱い意見が交わされ、米から関わる意義の大きさを実感している

「その水と大地で育つ米がうまいのは当たり前。そんな米を使わない酒造りなんてもったいない。だから原料米は燕、三条地域の地元農家と直接契約のものをメインにして、より上質で安心なものを求めています。

直接契約をすることで、農家さんも高野酒造の酒の米を作っているんだと自負していただけていると思います。契約農家の田には緑色の看板があり、それを見ると私たちもその場所がより愛おしくなるのです」 と、米作りから関わることができる点に大きな意義を見いだしている。

さらに酒米のクオリティをあげるべく、越後酒米栽培研究所を発足させて農家と蔵で意見交換を行っている。実家が農家の従業員も多く、同じ目線で話し合いができるのだそうだ。

独自の味わいと香りを生み出す蔵独自のオリジナル酵母

蔵に住み続ける微生物が蔵の味を、本来の地酒の世界を造りだす杜氏。

日本酒を醸すうえで重要なのが酵母である。協会酵母が主流だが、最近、蔵付き酵母や蔵独自に抽出培養したオリジナル酵母に注目している酒蔵も少なくない。高野酒造は早くから酵母のオリジナル性に目をつけていた。

「農学博士の廣井忠夫先生より、他にはない酵母で酒造りをしてみてはどうかとの指導を受けた。戦前はどの蔵も蔵付き酵母で醸してきた。よそにはない酒造りがしたいという気持ちを先代や先の杜氏も持っていたのでしょう。

自家製オリジナル酵母を開発して18年以上経ちます。オリジナル酵母のおかげか、うちの酒は淡麗辛口系ですが、他の蔵と醸している味わいは異なる。本来、地酒とは蔵の個性があるもの。画一的な味わいは魅力がない」

「高野酒造の酒は飲みやすいが、米の主張が強くて美味しいと称されたい」という高野社長。そんな酒を目指し、これからもとことん従業員全員で討論を繰り広げながら酒造りに臨むそうだ。

蔵元が勧めるお酒を紹介しよう。

取材・文 / 金関亜紀