『妙高山』の名を冠して熟練の職人が追い求める 気品あるしなやかさと雅な趣きのある酒
妙高酒造

妙高酒造MYOKO shuzo

一覧へ戻る
PICK UP 2018

旬のお酒で季節を繋ぎ、上越・妙高の四季折々の風景や文化も伝えていく『トランプシリーズ』をスタート。日本酒に馴染みの薄い方にも手に取っていただき、日本酒ならではの季節感を愉しんでいただきたいと思います!

妙高酒造株式会社 代表取締役社長・松田治久さん

越後富士と称される標高2454mの秀峰・妙高山。その名にちなむ清酒『妙高山』は、敷地内にある地下130mの井戸から得られる妙高山系の伏流水を使用している。
ややミネラルを含む軟水を生かし、淡麗でありながらも旨味がしっかり感じられる酒を醸している。

越後富士・妙高山の恵みの水、米、そして人

妙高山の美しい姿は、広い頸城平野一円から望める。

米は、山田錦などの一部を除きほぼ新潟県産米。杜氏をはじめ蔵人の多くは農家で、夏の間は米作りの日々となる。
杜氏自らが育て上げた五百万石の特別純米酒に続き、2017年に蔵人栽培米の純米吟醸酒も発売したところ、すぐに売り切れる人気酒となった。
農家として米に携わることにより、稲の生育期や登熟期の天候、栽培地の特性など、米の状態に影響を与える要素は酒造りが始まる前に彼らの中にインプットされている。
米づくりと酒造りを交互に行う蔵人達は、米の旨味を十分に引き出す酒を醸しだす。 水も米も、より良いものを追求しても完璧はなく、常に変動する。
それでも、毎年多数のコンテストで入賞の誉れを得る酒が造り続けられているのは、杜氏と蔵人たちの弛まぬ取り組みがあってこそ。「人」こそが、妙高酒造の酒造りの軸なのだ。

平田正行杜氏、黎明期の吟醸との出会い

大切に育て上げた稲穂を刈り取る平田杜氏。

妙高酒造は、1815年の創業の歴史を持つ。その杜氏を務める平田正行さんは、2009年に「全技蓮マイスター(酒造の部)」(全国技能士連合)と翌2010年に「にいがたの名工」(新潟県)に認定され、「上越に、その人あり」と称される名杜氏だ。
平田杜氏は、杜氏の郷として名高い旧頸城村(現頚城区)の米農家の次男坊。例に漏れず、父親は、冬には酒蔵に入る杜氏だった。大人になると、東京の大手銀行に就職。しかし、父と同じ道を志し、故郷へと戻った。
春から夏は田畑で米や野菜を育て、秋から冬は父が杜氏を務めていた酒蔵で修業。その後、国税庁醸造試験場を経て妙高酒造に入社する。当時としては異例の若さ、38才で越後杜氏となる。
杜氏となる前、協和発酵株式会社(当時)土浦工場を見学し、黎明期の吟醸酒に出会った。その時の味、そして震えるほどの感動を、今も忘れられないという。
それは正に芸術品。上品な香味のバランスとたおやかな味わいに出合い、平田杜氏は目指す酒の骨格を、進むべき道を定めた。今、円熟の時を迎えている平田杜氏の、杜氏としての原体験であった。

広大な麹室が生み出す、良質の麹

酒の味を決めるのは麹。妥協は許されない。

平田杜氏が入社した時代は、麹造りなど夜間の作業も多く、住み込みの蔵人も数多くいたという。麹は味の根幹。いい米を使っても、麹で失敗すればすべてが水の泡となる。
土作り・米作りにも哲学を持つ農家でもある杜氏にとって、麹はとにかく貴重な存在。麹造りは、きつくても一番肝心な工程である。 そこで検討を重ね、人が動きやすく処理しやすく、温度や空調管理機能も整った麹室に改良した。
実際に訪れて見てみるとその広々とした空間と高機能に驚く。その他、就業や作業も見直し設備を整え、少しでも負担のかからない体制へと移行させてきた様子がわかる。

自社培養活性酵母にこだわる

様々な創意工夫が施されている、広々とした麹室

妙高酒造の特徴の一つが、吟醸のみならず普通酒まで、2つの酵母を使用していること。何度も仕込みを行う中で見えてきた、酵母の特徴を最大限に活用するためだ。
メインとなるのは9号系酵母をルーツに持つ自社酵母。元気が良く成長力も旺盛で、発酵のスタートダッシュに適しているという。しかし、育て方を間違えるととんでもない方向へ行ってしまう危険があり、扱いが非常に難しい。
それに対して、もう一つの協会酵母は非常に品質が優れ、増殖もおだやかでスムーズに進む。そこで、それぞれ酵母が効果的に働くタイミングを見計らい投入する方法を編み出した。

ワインの製法にもある「混醸仕込み」

スマートなデザインの<トランプシリーズ>

妙高酒造ではこの方法を、異なる種類のぶどうまたは果汁を混ぜて作るワインの製法から「混醸仕込み」と呼ぶ。目指す酒に合わせて酵母を組み合わせることができ、良い酒ができる、と杜氏も松田治久社長も口を揃える。
2017年11月、四季折々の日本酒の楽しみ方を提案する『トランプシリーズ』をスタートした。見た目はスマートだが、中には職人魂と高度なスキルが詰まっている。「混醸仕込み」を思い描いて楽しむ、良いサンプルになるかもしれない。

日本酒の楽しみを世界のテーブルに

日本酒は、世界の食中酒となりえることを強く志向している<モンメルシリーズ>

松田社長: 日本酒の海外展開は海外の和食店中心に留まってしまっています。常温やぬる燗の美味しさや、日本酒は美味しくて身体にも良いことなど、正しい知識を広め、現地のレストランにも展開していく工夫を行なっていけば、ワインのように全世界に広まっていく、と考えています。

良い酒を世界へ、と、輸出に積極的に取り組んでいる同社。 世界へ広めるために必須と言えるフードペアリングの研究も進め、和食はもちろん、他ジャンルのテーブルにも日本酒を、と張り切っている。
濃厚な料理や香りの高い料理、鶏料理など、料理との相性を意識した『モンメルシリーズ』をそのスタートとして発売。好評を得ている。

その他にも蔵元が自信を持って勧める日本酒を、いくつか紹介しよう。

取材・文 / 伝農浩子