米、水、人、そして佐渡 「朱鷺の島」の恵みを四宝和醸で醸す『真野鶴』
尾畑酒造

尾畑酒造OBATA shuzo

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PICK UP 2018

学校蔵発の『佐渡のゆず酒』の継続、佐渡産山田錦の契約栽培を増やすなど、より地域との共生に力を入れていきます。

『真野鶴』の蔵元・尾畑酒造は明治25年創業。酒造りのモットーは「四宝和醸(しほうわじょう)」。
これは尾畑酒造オリジナルの言葉で、酒造りの三大要素と言われる「米」「水」「人」に、それらを育む「佐渡」を加えた四つの宝の和をもって醸すという姿勢を現す。

「世界農業遺産」の島

遺産の島・佐渡では野生復帰した朱鷺が田圃で舞う

国連食糧農業機関(FAO)が認定する、世界農業遺産の島・佐渡。島では、朱鷺を中心とした生きものの多様性を育む農業が進められている。
その中でも生きもの調査を実施しながら化学農薬・化学肥料を減らして栽培している米を「朱鷺と暮らす郷づくり認証制度」で認定。
尾畑酒蔵では、認証米に指定され、さらに独自の牡蠣殻農法を取り入れた契約農家が栽培した越淡麗をはじめ、島南部の山間部で清水により育てられた五百万石、さらには昨年から新規に作付けを始めた佐渡産山田錦などを中心に使用。
こうした米を佐渡の山脈から得られる柔らかな水で仕込んでいる。

冬の仕込み期間中完全泊まり込みによる伝統的な早朝仕込みを行う

伝統的な早朝仕込みの様子
廃校を酒蔵として甦らせた「学校蔵」

真野鶴の五代目となる専務の尾畑留美子さんは蔵の次女として生まれながら、東京で映画業界に身を置いていた。
そこで出会ったのが当時大手出版社で働いていた現社長の平島健さんだ。二人は1995年に結婚し、蔵に戻る。目指す味わいは佐渡の風土を写す、バランスのとれた透明感あふれる味わいだ。
酒の個性を生かしつつ、盃を重ねるごとに旨みが増していくのが理想という。その信念に基づいて造られた酒は、全国新酒鑑評会「金賞」、IWCゴールドメダルなどの受賞をはじめ、エールフランス航空ファーストクラス機内酒、トレインスィーツ四季島での採用など、高く評価されている。
海外展開では現在は16カ国に輸出。 尾畑酒造の経営理念は「幸醸心(こうじょうしん)」。この言葉も尾畑酒造のオリジナルだ。
平島さんは 「酒を醸すことで、幸せを醸していきたい」と言う。 尾畑さんは 「酒は故郷を伝える語り部。真野鶴を通して佐渡の魅力を広い世界に届けたい」と話す。
そんな二人の思いが詰まった新しい取り組みが、2014年にスタートした「学校蔵プロジェクト」だ。
平島社長は、「日本で一番夕日がきれいな小学校」と謡われながら少子化のため2010年に廃校になった旧西三川小学校を、酒造りの場「学校蔵」として甦らせた。そこには、4つの柱がある。
①酒造り:オール佐渡産の酒米で純米酒を醸し、そこに佐渡の天然杉を浸漬して木のぬくもりを感じる酒に仕上げる。
②学び:酒造りを学べる場として、国内外より希望者を受け入れる。
③交流:年1回開催する「学校蔵の特別授業」をはじめ、大学などとの様々な連携交流。
④共生:自然との共生を考慮して太陽光パネルを設置し、酒造りのエネルギーは電気に関して理論上100%自然再生エネルギーを導入。
他にも、地元農家の柚子を活用して柚子リキュールを作るなど、地域との共生を広げている。

佐渡と世界、百年の時をつなぐ酒

社長の平島健さん(右)と専務の尾畑留美子さん(左)

尾畑酒造は真野鶴を佐渡と世界をつなぐ酒と捉えて、多くの交流事業にも携わっている。この活動を通して酒を育む佐渡の地と人がより元気になればこそ、百年の後も酒造りを続けていけるという思いからだ。
佐渡が真野鶴を生み、真野鶴がまた佐渡を生かしていくことだろう。

蔵元の薦めるお酒を紹介しよう。

取材・文 / 伝農浩子