時代に流されず個性を150年守り育てる  新潟『かたふね』の身上はコクのある旨口
竹田酒造店

竹田酒造店TAKEDA shuzoten

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PICK UP 2018

新潟の酒は「淡麗辛口」のイメージが強く、そのような需要が高いのも事実だが、竹田酒造店では時代に流されることなく、創業以来の旨口酒を造り続けます。

砂丘で濾過された豊かな水を使って

『かたふね』は漢字で「潟舟」と書き、幕末の慶応2年(1866年)創業の頃より、この酒銘を使っている。「潟」は浜辺に点在する湖沼、「舟」は漁舟の船着場である「上小舟津」の地名に由来。実際、竹田酒造店は日本海の海岸線からほど近く、蔵は砂丘だった上に建っている。
この砂丘で濾過された水で醸す酒は、米の甘い香り、ふくよかな味わいを蓄えるという。事実、この蔵で使う仕込み水は敷地内の井戸から汲み上げる豊かな地下水。弱軟水で発酵力がほどよくあり、旨口酒醸造に適していると蔵元は強調する。

小さい蔵の大きな夢

「2017年関東信越国税局 第88回酒類鑑評会」授賞式にて

竹田酒造店の製造量は450石ほど。その全量が特定名称酒で、中でも特別本醸造酒が主力商品となっている。「品質勝負の決意の元に15年ほど前に踏み切りました」と語るのは9代目蔵元の竹田成典氏、60歳。27歳で蔵に戻り、頸城杜氏について造りも学んできた。
30数年勤めたその杜氏が高齢のために引退し、以後は蔵元杜氏として造りを担っている。着任しての決意は「100年続く蔵」。合理化の名の下の手抜きはせず、常に酒質の向上のために努力を惜しまない。
夢は日本一の酒造りと、心の内を明かす。 その夢に一歩近づいたことを証明するのが、今年開催された関東信越国税局の第88回酒類鑑評会での結果。『かたふね』は純米酒部門で首席・第一位に輝いたのだ。
このエリアには340を超える酒蔵があり、今回は208蔵が出品。純米酒部門には76銘柄がエントリーした。夢への大きな一歩と言えよう。

特別本醸造がIWCでトロフィー賞に

主力商品の特別本醸造はIWCで最高賞のトロフィーを2度も獲得

イギリスで毎年開催されるワインコンペは通称IWC。インターナショナル・ワイン・チャレンジの略称だ。この世界的に権威ある品評会には、2007年からはSAKE部門が設けられている。
『かたふね』は2013年に初めて出品するが、ここで驚くべきことが起きた。初出品にもかかわらず、特別本醸造がSAKE部門本醸造酒のカテゴリーで最高賞であるトロフィー賞を受賞したのだ。
審査結果による評価は金賞、銀賞、銅賞などがあるが、金賞を獲得した中で特に優れたものに授与されるのがトロフィー賞。
『かたふね』の主力商品がカテゴリーの頂点に立ち、世界に評価された瞬間だった。その栄誉は2015年にも訪れ、海外での注目度は高まっていった。

じわじわ増える海外への出荷率

米国ではしばしば試飲販売会を開催している竹田蔵元

『かたふね』の販路は地元・県内が75%で、あとは首都圏・全国・海外となっている。 「厳密に言うと今海外は7%ほど、米国が中心です。あとはロンドンと東南アジア。特に米国へは私自身が何度も足を運んでいます」と、海外戦略について語る竹田蔵元。
2016年にはサンフランシスコ近郊にインポーターを独自に設立。レストランやスーパーマーケットなどで、地道に試飲販売会を開いている。
特にサンフランシスコでは、日本酒専門店があってSAKE DAYなどのイベントが開催されていることもあり、日本酒への関心度・認識レベルが高いという。
『かたふね』特別本醸造の現地市販価格は50~80ドルだが、やはり人気があるらしい。大吟醸古酒に至っては、日本の値段の約40倍、4000ドルの値が付いて売られているそうだ。

受け継がれる旨酒造り

『かたふね』の酒銘は幕末の創業の頃より

竹田蔵元:『かたふね』の日本酒度は本醸造で-2~-3、純米酒で-4~-5。純米酒までマイナスという蔵は珍しいかもしれません。これからもふっくらと丸く、辛さと調和した甘味を特徴する酒を造っていきます。
口に含んだときにパッと深みが広がり喉元でスッと切れる。そういう幅のある酒を理想に掲げ、コクと丸みがあり、五味の調和した旨口を追求したい。
蔵の稼働率は現状95%、「量はいっぱいなので品質を追いましょう」と10代目を担う息子と話しています。幸い彼は日本酒大好き人間、農大で醸造も学んできました。ともに蔵で造りに携わる中から、技を伝承してくれることを期待しています。

瓶燗火入れが主体

全量特定名称酒

酒質の向上のためならどんな労苦も厭わないという竹田社長。『かたふね』は全量瓶燗火入れで仕上げられる。
瓶に詰めたお酒を1本ずつ湯煎、手間と労力の要る手法で低温加熱殺菌しているのだ。こうしたお酒は劣化が遅いから、というのが瓶燗火入れ採用の理由。
蔵元の薦めるお酒を紹介しよう。

取材・文 / 八田信江